21日(木)付日経新聞朝刊(首都圏は夕刊)生活面「海外の話題」欄に、ニューヨーク市内で働く女性たちをターゲットに地球環境の持続可能性(サステナビリティ)や企業の社会的責任(CSR)に関するテーマの勉強会を企画している非営利 団体「持続可能な未来のための女性たちのネットワーク(Women’s Network for a Sustainable Future)」について書いた記事が掲載されました。どうぞご覧下さい。
 ミュンヘンからニューヨークに飛んでそろそろ4ヶ月。そういえばコロンビア大学客員研究員として一体何をやっているのか、という話題に全然触れていなかったことに気付いたので(これだけでもいかに“研究”していないかということがバレそうだ!)、学期の区切りも良いこのあたりで少しご紹介したい。

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 私は今学期、同大学国際行政大学院(通称SIPA)傘下の東アジア研究所というところに籍を置きながら、取材テーマであるサステイナブルなビジネスやライフスタイルのあり方に関わるテーマを扱う授業を聴講していた。これらの授業は、すべてビジネススクールに設けられたソーシャルエンタープライズプログラム(社会事業専修)から提供されるものだ。このプログラム、元々は公共団体やNPOの運営を学ぶプログラムとして始まったのだが、現在ではこうした団体での活動を望む学生だけではなく、利益と企業の社会的責任(CSR)の両立に積極的な会社への就職に関心のある学生や、ビジネス的手法による社会問題の解決を目指して事業を興す社会起業家を夢見る学生、さらには途上国での開発支援に関連するビジネスに関心を持つ学生たちのニーズに応えるカリキュラムを提供している。「社会におけるビジネス」「社会起業家」「多国籍ビジネスと人権」「社会部門の戦略的経営」などなど、授業タイトルを見ただけでも、最初に利益ありきのビジネススクールの中で同プログラムがいかに異色の存在かということがお分かりいただけると思う。

 ほとんど有名人見たさに聴講していたスティグリッツ教授(ノーベル経済学賞受賞)の授業も悪くなかったが、聞いていて非常に参考になったのは「金融とサステナビリティ」というタイトルの授業。ここでは、京都議定書の発効が決まって注目度が増す二酸化炭素(CO2)排出権取引や、CSRに積極的に取り組む企業に対象を絞った投資形態を総称する社会的責任投資(SRI)、途上国の貧困削減につながるプロジェクトに融資するマイクロファイナンスなど、サステイナブルな地球環境の実現に貢献する金融のあり方について一通り学ぶことができた。担当のブルース・アシャー客員助教授は、普段はCO2排出権取引を利用して途上国での自然エネルギービジネスを支援するEco Securitiesという金融コンサルティング会社の社長として世界各地を飛び回るビジネスマン。授業は今学期に始まったばかりだったが、経験豊富なプロから教えてもらえる授業とあってか学生の評判も概して良かったようだ。

 先日の最終講義の最後は、授業のテーマになった金融ツールを扱ういわゆる“サステイナブル金融業界”で働くための情報交換セッションとなった。ハーバード大学でMBAを取り、大手投資銀行での経験を経て天職にたどり着いたアシャー氏に言わせると、ここまでのプロセスは「メジャーな金融業界の連中からは疎まれるし、NGOからは嫌われるし、給料は下がるし」という散々なもの。CEOの肩書きの入った名刺を差し出しても、受け取ってもらえなかったこともざらだったらしい。それが今では、彼の会社の事業内容に関心を持った某巨大投資銀行のバンカーから「会いたい」と言われるようになり、京都議定書の発効で社業がにわかに忙しくなってきたという。

 何かの形で社会にサステイナブルなインパクトを与える仕事がしたいと考える学生たちを前に、彼は最後にこう言った。

“Trends are your friends!”

 決して平坦な道のりではないけれども、追い風に乗って進んで行きたいものだ。
 早いもので今年もあと1ヶ月。この時期になると、今年1年を振り返りながら来年はどのような年になるのかと予想する類の特集がメディアを賑わします。

 という訳で、12月4日(土)発売の雑誌「ソトコト」1月号の特集は”2005年LOHAS大予言”。私たちの周りで静かに芽生えつつあるスローでサステイナブルなライフスタイルは、来年はどのような広がりを見せるのか−。私は今回、地球環境や働く人々の人権への配慮といった、CSR(企業の社会的責任)を伴った持続可能なビジネスのあり方を様々な角度から学べるMBA課程が増えている欧米ビジネススクール事情をリポートしています。

SOTOKOTO 01月号 [雑誌] /
 ここ1ヶ月ほど、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibilit CSR)というテーマ絡みの会議やイベントを取材する機会が続いた。CSRとは、企業たるもの利益の追求とともに地球環境や労働者の人権への配慮といった社会的責任を果たすべし−という考え方。その取材現場で、巨大多国籍企業による環境破壊やモラルを無視した搾取行為を取り上げて企業権力を告発した「The Corporation」というカナダのドキュメンタリー映画がさかんに話題に上っていたので、今日さっそく観に行って来た。

ザ・コーポレーション ザ・コーポレーション
ジョエル・ベイカン (2004/11/10)
早川書房

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 映画の中で、人間や環境への負担を無視して暴走する多国籍企業の活動ぶりを、標準的な精神医学のチェックリストを使って評価する場面がある。途上国の子どもたちを使った超低賃金・長時間労働で作られた製品を売り出して平気な顔をしているアパレル業界は「他人への配慮が欠如」「持続的な対人関係の構築が不可能」。牛乳の生産量をアップさせる一方で様々な形で牛の健康にダメージを与える成長ホルモン剤を「安全」と評して販売し続ける農業化学メーカーは「他人の安全を無視」「利益のために絶えずウソをつき続ける」−といった具合だ。診断の結果、こうした企業は「精神を病んでいる」と診断された。

 これ以外にも、上記の農薬化学メーカーの暴挙を告発した番組を制作したディレクター2人がFOXニュース(メディア王ルパード・マードックのニューズ・コーポレーション傘下)を解雇されたことや、巧みな広告戦略による子どもたちへの製品の売り込み、解読される遺伝子情報が次々に特許で抑えられている現状などが描かれる。観ていると、“病んだ”巨大多国籍企業の影響力の大きさと問題の重大さに圧倒される思いがする。

 果たして、私たちはこのまま“病んだ”企業たちと心中していく運命にあるのだろうか。もしかすると、そうはならないかもしれない。スーパーや飲食チェーン店の新規出店を禁じるよう求めたカリフォルニア州アルカタの住民発議。水道民営化を覆したボリビアの住民運動。徹底した製品リサイクルとビジネスモデルの見直しによって世界最大のカーペットメーカーから世界最大の“カーペットリース”会社に変身した米インターフェイス社。再生可能エネルギー事業を世界的に展開して“脱石油”戦略を進めるロイヤル・ダッチ・シェル社。映画の終盤には、悲劇的な運命を跳ね返そうとする企業や市民の間に生まれつつある希望的な萌芽の数々が紹介される。そして最後は、ご存知映画監督のマイケル・ムーア氏の「この映画を見た人たちが、映画館を出た後から何か行動して欲しいと心から思う」というメッセージで幕を閉じる。

 映画館から戻ってすぐにこれを書きながら、楽天的にも悲観的にもなれない不思議な感覚に覆われている。ただ一つ言えるのは、グローバリゼーションの真っ只中を生きる私たち一人一人が自分の価値観や立ち位置を決める上で、間違いなく貴重な示唆を与えてくれる作品の一つだということだろう。The Corporationは、サンダンス映画祭やトロント国際映画祭などで観客賞を受賞し、ドキュメンタリー映画としてはカナダで史上最高の興行収入をあげたそうだ。日本ではアップリンクの配給で、2005年12月10日から各地で順次公開される。

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